お久しぶりです。2回生スタッフの江島です。ここ一週間で滋賀は一気に寒くなり、赤ないし白の素敵な服(ロージャケ)でエッセン部屋は満たされています。一方で、秋季大会を終えてますますボートに対する熱気が高まったのか、はたまた一体全体何か別の理由があるのかは知りませんが、ますます熱い雰囲気に包まれているとも感じます。
僕は今、少々法律の勉強を嗜んでいます。そこで今回はボート部に関するあることについて法的に考えてみようと思います。
- 知らなければ許される?
ボート部ではお馴染みのロージャケ(ローイングジャケット)。合宿所にあるロージャケの名前を見てみると、全く知らない人の名前であることが多々あります。これは値段が5ケタにも届いてしまうほど高いため、自分では購入せず先輩から譲り受ける人が多いからです。主務部屋にも、後輩にロージャケを譲り渡すことを承諾しておいて行ったのか、ただ回収するのを忘れていただけなのかは分かりませんが、僕が名前を知らない先輩のロージャケが年中椅子の背もたれにかかっています。もっとも、今年は4回生が少なかったためロージャケを譲り受けることができる1回生は限られており争奪戦になっていて大変そうです。
では、次の[事例]では、最終的に誰がロージャケの所有権を有していることになるでしょうか?
[事例]
先輩(A)が回収するのを忘れて合宿所に放置していったロージャケを勝手に使っている人(B)が、自分が引退するときに、後輩(C)にそのロージャケをいくらかの値段で売ったとします。Bは、Cにロージャケを売るときに、「これは自分の持ち物である」と言いました。Cも、ロージャケにBの名前が刺繍してあったため、Bがロージャケの所有権を有していたことを信じて疑いませんでした。しかし、Aの名前とBの名前はたまたま同じであったのです。
ある時、Cがそのロージャケを着て練習しているところにAが来て、「そのロージャケはもともと自分の物だから返してほしい」と言ってきました。Cは代金を払ってBからロージャケを譲り受けたのでそれを拒みました。
そこでAはCに対してロージャケの返還を求める請求を裁判所に申し出ました。
まず、Aは自分がもともとロージャケの所有権を有していたことを理由にCに対してその返還を求めるでしょう。
これに対して、Cは、自分はBから売買契約(民法555条)によりロージャケを譲り受けたためその所有権を有しているとして反論するでしょう。
しかし、Aはこれに対してさらに、Bは自分が合宿所に放置していたロージャケを勝手に使っていただけであり、その所有権を持っていたわけではない。所有権を持っていないBからロージャケを譲り受けたCもまた所有権を有していないと再反論します。
確かに、Aの再反論は正当であり、このままではCは敗訴し、せっかくお金を払って手に入れたロージャケを返還しなければならなくなります。しかし、CはBがロージャケの所有権を有していると信じて取引したのであり、そのような信頼を保護する必要があります。保護されないとなるとCがあまりにもかわいそうであり、買主はいちいち売主が所有権を有しているかを確認しなければならないことになるため、取引がスムーズにいかなくなります。
民法ではCのような者を保護する規定があります。それが民法192条に規定される「即時取得」という規定です。
[民法192条]
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
要するに、取引をするときにその物の所有権が売主に属すると信じて疑わなかった者は、その物の所有権を獲得できるというものです。
この事例では、AとBの名前がたまたま同じであったという事情も相まって、Cはロージャケの所有権がBにあったと信じて疑いませんでしたし、そう信じる正当な理由もあります。
したがって民法192条の規定が適用され、ロージャケの所有権は最終的にCに帰属することになります。
勝手にロージャケを使われた挙句、その所有権を失うことになってしまったのでAがかわいそうでは?と思うかもしれませんが、先に述べたような潤滑な取引を確保する要請の下、法律はこのようなスタンスを取っています。
- 勝手に伐採される?
旧合宿所の奥の方の自転車置き場あたりにはたくさんの草が生い茂っており、時折草むしりをしなければとても通ることができないほどの背丈にも成長します。その中には大量の葉っぱを生い茂らせた木も生えています。しかし、隣家に葉や枝が及びそうであったからなのか、一年前と比べて木の本数が少なくなった気がします(切り倒されたのかな)。ぽんかんかみかんか分からないような果物が成っていた木も消えてしまいました。
では、相手の土地に木の枝が及んだからといって、勝手に枝を切除されてもその木の持ち主は文句を言えないのでしょうか?
民法233条には以下のように規定されています。
[第二百三十三条]
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
第1項によると、木の所有者に枝の切断を要求することはできても、自分で切ることはできないみたいですね。ただし、その要求に従わなければ、金銭を請求されるに至る可能性もあります。
要するに、お隣さんに迷惑をかけないようにしましょうということです。
ちなみに、第2項には木の根が境界線を越えた場合には勝手に切断していいと規定されています。枝より根のほうが重要そうなのに勝手に切断していいのと思うかもしれませんが、その理由を話すと長くなりそうなので割愛いたします。
冬が到来しつつありますが、僕も「熱く」スタッフ業務をやっていきたいと思います。