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根っこ

お久しぶりです。2回生漕手の十川和哉です。最近いろいろな人と食事に行く機会がありましたが、会う人によっては「良いお年を。」と言うようになりました。1年間あっという間でしたね。2025年を振り返ってみて、みなさんはどんな1年でしたか。年末にブログ当番がまわってくると、こんな話題しか思いつきません。自分事ではありますが、今回のブログでは今シーズンについて振り返ろうと思います。とは言っても、みんなと同じように戸田で漕いだわけでもなく、エルゴが大きく伸びたわけでもなく、順風満帆なシーズンではありませんでした。4か月という短いようで長かった夏に、多くのものを失い、それ以上に大事なものに気づくことができました。

夏の始まり

 

さかのぼること7か月前、朝日レガッタが終わり、東大戦選考が控えるタイミングで肋骨を骨折しました。学科の実習の関係で新人戦に出場できないことが決まっていたため、東大戦・関選・インカレと、何かしら経験を積んで成長したいと意気込んでいたところで、すべてが僕の前から消え去りました。ちょうど1年前も怪我をしており、先輩や同期の東大戦を、ただ1人東レ船台から見ていました。こんな思いは二度としたくないと思っていたので、痛くなってからも何度も無理をしました。今思えば馬鹿らしいですね。毎日のように痛みが増し、神経まで痛み出し、合宿所のベッドから起き上がれなくなったことを今でも鮮明に覚えています。

痛みが和らぎ、運動が少しずつできるようになってから、さらに大きな壁に直面しました。暗く暑い艇庫の隅で、ワットバイクを漕ぎ続ける日々。いくら漕いでも、自分の気持ちを表すかのように前に進む感覚はなく、目に映る景色はひたすら同じでした。勝つために、速くなるために水上へ出ていく同期や先輩の姿を艇庫の隅から見ていて、正直つらい思いをしました。

「こんな毎日つまんねーな。」
「別にボートを漕がないなら合宿所に来なくてええやん。」
「他に楽しいことあるっしょ。」
「このまま取り残されるなら辞めちまおうかな。」

こんな気持ちになっていたら、僕はどうなっていたのでしょうか。鍵かっこで書いた内容は、当時なり得た心境を想像しながら書いてみました。実は、怪我をして少し経った頃、ある気持ちの変化が訪れました。

 

とある日、母校のサッカー部が密着されている動画を見ました。高校のサッカー部は少し変わっていて、部活をするうえで「勝つこと」だけを目的としておらず、「楽しむこと」を一番大切にしていました。勝つことがすべてだと考える人もいますし、その意見がマジョリティーかもしれません。しかし、勝つことが目的になると、負けてしまったときに何も残らない。一方で、楽しむことを目的にすることで、その過程も魅力あるものとなり、失敗を台無しにしないと教わりました。もちろん、結果として勝つことを目指しますが、勝利至上主義とは少し違う考え方です。楽しむといっても、いわゆる「enjoy勢」とは少し違うと思います。勝負の世界において、楽しむことと楽なことが同時に成り立つことはないはずです。真剣に取り組む中で、純粋な楽しさを見出すことが大事なのだと改めて感じました。どの部活でも、前向きに楽しそうに練習に取り組んでいる人が、一番成長するはずです。そんなことを考えながら動画を見ていると、監督が「サッカーができていること自体が幸せなんだぞ。」とおっしゃっていました。現役時代に何度も耳にした言葉でした。

競技は違えど、当時の僕の心に深く刺さりました。怪我をしたこと、選考や大会という勝負の土俵にすら立てなかったこと、満足に練習できなかったこと。こんなことで病んでいる場合ではないと痛感しました。手術が必要なほどの大怪我ではなく、バイクや筋トレといった練習はできる。OBOGの方々の支援によって質の高い練習ができるワットバイクがあり、スタッフの方々のおかげで、練習後にはエッセンを食べられる環境がある。そして、僕よりもはるかに強い選手たちが、さらに強くなろうと互いに刺激を与え合っている。そう考えると、怪我している状況でも自分はとても恵まれた環境にいるのだと感じました。それからの毎日、存分に楽しんでいこうと決意しました。メニューのワット数を少しでも更新できたら1人でガッツポーズをして、更新できなくても頑張った自分を褒めて、また明日やってやるぞと意気込む。そんな日々を過ごしていました。

 

少し話は変わりますが、先日、僕が長い間ファンであるDef Techのライブに行ってきました。My Wayをはじめとした有名曲を聴けたのも良かったのですが、特に印象に残ったのはMCでの言葉でした。

「つまらないと感じたら、自分がつまらない人間になったと考えるようにしている。」

この言葉を聞いたとき、この夏に経験したことと重なるものを感じました。環境が急につまらなくなることはほとんどないのに、「つまらない」「自分に向いていない」と言い訳をしたくなる。怪我をしたことも、つまらない理由にはならないはずです。冬季だから、というのも言い訳にはなりませんね。自分の心との向き合い方ひとつで、周りの見え方は簡単に変わるのだと感じました。

インカレ応援

 

ここまで書くと、怪我の期間を自分の力だけで乗り越えたように見えるかもしれません。当時は、周りの人たちは大会など、それぞれの目標に向かって頑張っているのだから、迷惑をかけずに自分で乗り越えようと思っていました。でも今振り返ると、自分ひとりではあの期間を乗り越えられなかったと思います。

普段はたくさんいじってくれるけれど、真面目な相談にも乗ってくれる先輩方。会うたびに笑顔で話しかけてくれる後輩たち。何気ない会話でも元気をくれる同期たち。そして、ずっと温かい言葉をかけ続けてくれたトレーナー。

人の温かさに、これでもかというほど気づかされた期間でした。自分で変えようと踏ん張っていたつもりでしたが、実際には何度も周りの人に支えられていました。弱さを見せても受け止めてくれて、一緒に前を向いてくれる。ボート部は、そんな人たちの集まりだと思います。

楽しそう
秋季オフ

 

少し思いを語りすぎたブログになってしまいましたが、たまにはいいでしょう。先日秋季が終わり、最後になんとか結果を出すことができました。悔しさは残りますが、自分の全力を出し切れたこと、そして何よりボートを漕げたことが素直に嬉しかったです。冬季に入り、エルゴも水上も、みんなに追いつかなければならない立場で必死に頑張っています。経験も浅く、体も大きくありませんが、楽しみながらやっていきます。強くなります。

追記
「あなたという人間を作り上げている根っこのようなものは何ですか?」
高校1年生の頃、似たような質問をされたことがあります。当時は全く答えられませんでした。これから先、環境や試練という風に揺れることはきっとあるが、それでも倒れずに立ち続けるために、自分を支えてくれる根っこ。今なら少しだけ、この質問に答えられる気がします。根っこのようなものに気づけた夏でした。みなさんはこの質問にどのような答えをしますか?

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