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反転について

 注:この記事にはlatexを使用しておりません.非常に見にくいものになりますがご了承ください.

 皆さんこんにちは.新3回生漕手の大蔵翔太です.私は高校時代,初等幾何学(俗に言う図形問題)に傾倒していました.初等幾何学にはいくつかの証明に用いる道具があり,その一つに反転という操作があります.私がたまに使っていた技に,反転をアレンジしたものがあるので,今回のブログでは,その姿と,それを用いたある初等幾何学の難問の証明を観察してみましょう。

定義1.1 Oを中心とする半径rの円Γと点Pをとる.半直線OP上に

|OP| • |OQ| = r²

を満たす点Qをとる.PをQに移す操作を円Γによる反転という.ただしPがOと一致するとき,反転で無限遠点に飛ぶものとする.

 反転は平面(+無限遠点)から平面(+無限遠点)への全単射であることに注意しましょう.実践的には,図形全体を反転によって別の図形に変換することがほとんどです.こうすると,最初の命題が簡単な命題に変換され,証明が簡単になる場合があります.この場合,円Γの半径rを変えても,変換先の図形は相似を保ったまま変形するだけなので,半径rは本質的ではありません.そこで,rを他の特別な値に変えることで,便利なことが言えないだろうか,という視点から,アレンジした反転を以下で定義します.

定義1.2 点Oと円Γについて,Γに関するOの方べきの値をρとする(ρ>0).任意の点Pについて半直線OP上に

|OP| • |OQ| = ρ

を満たす点Qをとる.PをQに移す操作を円Γに関するOによる反転と呼ぶ(ことにする).ただしPがOと一致するとき,反転で無限遠点に移るものとする.

このとき,反転の中心はΓの中心ではないことに注意しましょう.この反転によりΓは動きません.この反転について以下の主張が成り立ちます.

定理1.3 円Γと円Γに接する直線mがある.点Aをm上にない点とすると,Γに関するAによる反転で,直線mはΓに接し点Aを通る円に移る.

証明

直線mの像が円であることは既知とする.mとΓの接点をTとおく.直線ATとΓのT出ない方の交点をUとおくと,方べきの定理より|AU| • |AT| = ρ であるから,Tは(以下略)による反転でUに移る.n上の任意の点Pを取り,反転によるPの像をQとする.反転の定義と先の議論より,|AP| • |AQ| = ρ = |AU| • |AT| .方べきの定理の逆よりP,Q,T,Uは同一円周上にある.Uを通るΓの接線(nとする)とmとの交点をZとする(線角を導入すれば定義する必要はない)と,以上の議論から∠ZUT = ∠PTU = ∠PQU.接弦定理の逆よりmの像はUでnに接するから,Γに接する.無限遠点はAに移るから,題意は示された.◇


 

 

例えば,二つの円が接することを示したいとき,一方の円上の一点と,もう一方の円に接する直線を適切に選べば,この定理によって命題を示すことができます.初等幾何学における一つの難問であるフォイエルバッハの定理は,この方針によりある意味自然な帰結として示すことができます.フォイエルバッハの定理の主張を確認しましょう.

定理1.4 (フォイエルバッハの定理)

三角形ABCの九点円と内接円は接する.内接円を傍接円に変えても同様である.

ここで九点円とは,三角形ABCの各辺の中点,各頂点からの垂線の足,垂心と各頂点を結ぶ線分の中点をすべて通る円である.

拡張した反転を用いてこの定理を証明することを考えるとき,内接円に接する直線と,九点円上の一点をうまく選べばよいです.内接円の場合と傍接円(の一つ)の場合を同様に示す場合,内接円と傍接円の共通接線(の内,三角形の辺でないもの)は候補としてふさわしく,九点円上の一点としては,中点がふさわしいと思われます.垂線の足は図形を書けば明らかにふさわしくないことがわかります.このような方針で示そうとするとき,反転によって共通接線が九点円に移ることを示すことになります.つまり共通接線上の一点と九点円上の一点の組で,反転によって移り合うものを二組確認することができればよいわけです.

証明の概略

必要な定義を行います.

点AmをBCの中点とする.点Abを角Aの二等分線とBCの交点とする.点Aiを内接円とBCの交点とする.B,Cについても同様に点を定める.直線AAbに関して直線BCと対称な直線をlとする.(lが内接円とAの傍接円との間の共通接線である(証明略)) さらにPをlとAmBmの交点,QをlとBmCmの交点とする.三角形ABCの全周長の半分をs(=(a+b+c)/2)とおく.

|AmP|・|AmBm| = |AmAi|^2 を示そう.

まず中点連結定理より|AmBm| = |AB|/2 = c/2 である.計算すれば |CAi| = s-c より,|AmAi| = |a/2-(s-c)| = |c-b|/2である.|AbB| = ac/(b+c) (角の二等分線に関する基本公式)より|AbAm| = | |AbB| - a/2 | = |a(c-b)/2(b+c)|.lとABの交点をC’とおく.AB//AmBmより△PAbAm∝△C’AbBで,|AmP| = |BC'|・|AbAm| / |AbB| = |c-b|^2/2c.したがって |AmP|・|AmBm| = |AmAi|^2 が成り立つ.Qについても同様に|AmQ|・|AmCm| = |AmAi|^2 が成り立つ.

ここで |AmAi|^2 はABCの内接円Γに関するAmの方べきの値であるから,定理1.3より,点Bm,CmがAmを通りΓに接する円上にあることが示された.この円は九点円に他ならない.◇

このように,この技を知っていることで証明の道筋を立てやすくなることがあるので頭の片隅にでも置いておくといいかもしれません.(おわり)

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