2019年度より舵手つきペアを廃止する。
理由:FISAの正式種目から削除されたこと。
エントリー数が少ないこと。
男女間のバランス是正。
これは、2018年12月21日に日本ボート協会競技委員会より出された通知「2019年度(及びそれ以降)大会の種目について」の一部です。この部分は全日本選手権についての記述ですが、全日本大学選手権(インカレ)においても同様です。この決定の如何はここでは置いておくとして、端的な影響としては、一つに「インカレに出漕できる舵手が3名→2名になった」ことが挙げられます。あまり変わらないではないか、と思われるかもしれませんが、この差は重要です。大学ボート部、特に未経験者中心の部では、2-4回生が主力です。各学年に舵手が1人いるとしたら、合計3人となります。この場合、昨年度以前は全員出漕できたのですが、今年度以降は1人は出漕できないこととなります。それでいいではないか、実力主義だ、と言われる方もあるかもしれません。それはそうなのですが、大学スポーツというのはその本質から新陳代謝の大きいものであり、かつ大学から始めることの多いボート競技では全く競技について知らない状態から2-3年でトップレベルの選手に育て上げることが求められます。そのためには、継続的に練習することが重要なことは言うまでもないのですが、それと同じかそれ以上に、レースに出漕し実戦経験を積むことが肝要となります。ボート競技には、本番(=レース)と練習の性質・環境が他競技と比べても大きな差があるにもかかわらず、レース機会が非常に少ないという特徴があります。その中で実戦経験を積んで成長していかなければならないのです。特に、その役割からしてCOXは実戦経験というのが特に必要とされます。ここで本題に戻ると、このように実戦経験を必要とするCOXの出漕機会を奪うのが上記の通知だということです。この影響は、上に書いたその理由から未経験者中心の大学ボート部に大きいものと考えます。
さて、我が京大ボート部の現状はどうでしょうか。インカレ選考に参加したCOXは4回生1名、3回生2名、2回生1名です。ここでは選考結果は示さず、回生を基準に考えていきたいと思います。便宜的に上回生から上位に評価されたとして、4回生1名と3回生1名がインカレに出漕したとします。そうなると、3回生1名と2回生1名は出漕できません。自分もそこに含まれるので論評するのは恥ずかしいのですが、上記の一般論を当てはめれば、来年度、再来年度にインカレに出漕、それも下位クルーでなく中上位クルーで出漕すべき人材がレース経験を積むことすらできないのです。それだけでなく、ボート競技ではシーズン中は大会に出漕するクルーごとに練習するので、大会に出られないということはすなわち、その期間練習するクルーもないということです。これは、「継続的に練習することが重要なことは言うまでもないのですが、それと同じかそれ以上に、レースに出漕し実戦経験を積むことが肝要とな」るとしたうちの後者だけでなく前者の機会もないということを示します。さらに、そのような状況に置かれたCOXがモチベーションを維持できなくなるということも想像に難くありません。
この現状をどうすればいいのでしょうか。直接的には、どうしようもありません。出漕人数を増やすことは当然できませんし、最大の目標となる大会であるインカレで教育のためにクルーを組むことはありえないと言っていいでしょう。そうなれば、「COXをする以外の形でCOXとしての能力を向上させ、かつモチベーションを維持する」しかありません。これは一般的な問題でありながら、同時に私個人の問題でもあります。ですから、この問題については今後の私自身の実践によってそれに対する回答としたいと思います。
三回生舵手 菅井渉太
画像はhttp://www.worldrowing.com/news/murray-bond-2014-world-rowing-male-crew-the-yearより