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初めての選考

 今朝はいつもと違う。みんなの顔つきが違う。そう、今日はボート部生活初のTT(タイムトライアル)だ。

 コースは国道1号線の橋脚から名神の橋脚までの1000m。途中緩やかなカーブがある。中間にある唐橋の狭い橋脚が難所だ。シングルスカルで漕ぐ。長くはないが短くもない。
今回は1週間後に控える秋季選考を見据えての練習TTだ。あくまで練習。そうはいっても緊張する。同期の中での自分の実力が突きつけられるのだから。

 スタート位置に着いた。今回のTTは30秒ごとに次が発艇するヘッドレース形式だ。国一のあたりに何艇ものシングルスカルが溜まっている。前の同期が発艇した。次だ。あと30秒、20秒、10秒、5秒…1秒…。はじまった。

 出だしはいい感じ。このまま続けば…。あれ?もしかして沖に出すぎてる?しまった。Sサイ強調。くそっ。間に合わないか。
そして焦りからミスオール連発。唐橋を超えたあたりから諦めムード。そのまま気を取り直せずにゴール。
結果は男子漕手21人中20位。散々だ。ここまで遅いとは思わなかった。琵琶湖に沈んでしまいたい。

 それから1週間後の選考本番。エルゴとTTの2部構成だ。1日目は2000mエルゴ。当日の夕方、いつものように自転車で合宿所に向かう。
山科のあたりを走っていると不穏な音が聞こえた。プシュ。え?パンク?おいおい。
自転車屋に寄る時間もないので徐行で合宿所に向かう。間に合わないかも…。
普段の倍の時間をかけてなんとか合宿所に到着。しかしエルゴルームに着いたとき、同期はすでにアップを始めていた。まったくなんで今日パンクするんだよ。

 気持ちも高まらないまま2000mエルゴが始まった。アップも碌に出来ていない。まあそんな状態で結果が出せるはずもなく結果は15位。嗚呼無情。でも仕方ないか。切り替えて翌日のTTに向かう。それしかない。そう、それしかないんだ。

 選考2日目は1000mTTを2本。2本あるので1本目で失敗しても2本目で挽回することは不可能ではない。これで選考が終わる。そう考えると2本あっても全く緊張はほぐれない。
もう失敗できない。前みたいに航路を外さなければ絶対大丈夫。そう言い聞かせて時を待つ。長い30秒だ。

 発艇した。出だしから順調だ。航路もいい。今回はいける。そう思っているうちに難所の唐橋を超えた。あとは名神まで全力で漕ぐだけ。出し切るぞ。
気づいたら船台の横だった。同期が声援を送っている。スパートをかけた。もう100mない。あと少し…。
「ゴール!」、ゴールラインを見守る新人コーチの声が夏の瀬田川に響いた。

 その調子で2本目も上手くいった。決して上位層というわけではなかったが、21人中9位というのは私にとって満足いく結果だった。ベストは尽くせた。

 TT翌日の朝、選考結果が発表される。9時半、エッセン部屋に集合。みんなリラックスしているように見える。いや、そう見えるだけか。どうやって発表されるのだろう。初めての選考なので、そんなこともわからない。色々想像を巡らせる。読み上げられるのか?ボードに書いてあるとか?
とりあえず今は待つしかない。
新人チーフコーチが入ってきた。ホワイトボードを引っ張ってきている。なるほどね。
そしてコーチがボードに手をかける。緊張感が走る間もなくボードは反転した。

 ガチャ。

 ボードに目を走らせる。まるで合格発表。
どこだ……?あった!3rdエイトのB(バウ、一番船首側のポジション)だ。本当は1stエイトに乗りたかったけど、しょうがないか。今のベストはこれだ。
希望していたBに乗れるみたいだしよかったな。秋季選手権まであと1ヶ月半、全力で駆け抜けよう。

 初めての選考が終わった。

 はい。初めまして。1回生新人漕手のSサイ漕ぐ太郎(本名をネットに載せたくないので…ペンネームで許してください…)です。秋季選考はなかなか感慨深かったので長々と書いてしまいました。読み返すとかなり恥ずかしいです。文才のなさがバレてしまいます。やはり文章というものは書いている時が一番楽しいですね。

 今回初めてのブログ投稿ということで、最近あった選考について書いてみました。選考の緊張感は文面から伝わったでしょうか? 私は高校時代も運動部に所属していましたが、部員数が少ない部活だったので選考などもなく、常にスタメンでした。今思うと随分と緊張感がないなあ、と思います(笑)。

 さて、今回の選考ですが、満足な結果を出せた者、失敗してしまった者、TTで沈してしまうなどのハプニングに見舞われた者など、まさに悲喜交々な選考でした。そんな選考の中で私は1つ感動したことがあります。

 それは2000mエルゴ・TT中の同期に対して熱烈な声援があったことです。普段の1回生は同じ京大ボート部の仲間ですが、選考のときは完全にライバルです。大事な選考のときにライバルがベストタイムを出したら困りますよね?だって自分はいい艇に乗りたいですもの(笑)。当たり前です。
でも我々1回生は違いました。全員がベストタイムを出すことを全員が願っていた。選考時のエルゴルームに響く煩いぐらいの声援がそれを物語っていました。この同期なら全クルー優勝できる、そう信じています。

 現在1回生はクルーを組み、秋季選手権に向けて日々練習に励んでいます。私は3rdエイト”千都”のクルーキャップとなったので一層身が引き締まる思いです。クルーキャップとして9人のクルーを束ねる難しさをひしひしと痛感する一方で、クルー全体の成長が感じられるという何物にも代えがたい楽しみも感じています。

 秋季選手権まで1ヶ月と少しですが、見違えるほど成長して優勝を勝ち取りたいと思います。
応援よろしくお願い致します。

 話は変わりますが、下の写真を見てください。なんだか顔に見えませんか?私は大艇庫ちゃんと呼んでいます。いつもありがとう大艇庫ちゃん♡