「確率論と中国語の勉強」と言えば大学生にはある遊びが一意に伝わる。
東村です。
どうやら僕の文章は評価が大きく分かれる傾向にあるようですね。今までの路線も一部の方々からは欲されているようなのでこのままでいこうと思います。極力誰でも読めるように書いているので敬遠せずに目を通していただけると嬉しいです。
さて、ボート部の日常と言えるエッセンにおいて、頻繁に発生する戦いがあります。それは、ジャンケンによって人に皿洗いを押し付ける皿洗いジャンケンです。食後に時間的余裕のある休日は特に大人数が集まり、十人以上分の皿を洗う負け犬の光景が見られることもあります。ジャンケンで勝敗を決めるというのは、いってしまえばギャンブルです。ギャンブルに対する見方は確率についての知識に左右される面が大きいです。
例えば、「昨日負けたから今日負ける確率は低い」という考えがあります。ここではn=10人の参加者の中から一人の敗者を決めるギャンブルを考えましょう。それぞれの人が選ばれる確率が同様に確からしいとすると、負ける確率はです(実際にはよく負ける人というものが存在しますが)。すると、条件付き確率の考えから
昨日負けて今日勝つ確率は
昨日負けて今日も負ける確率は
となり、この考えは正しいように思われます。しかし、ここには重大な誤謬があります。この確率は「昨日の勝敗も確率に含んでいる」という点です。つまり、この確率は「昨日ジャンケンする前に、今後2回分の結果を予想する確率」なのです。この場合は「昨日負けた」という条件は既に確定して(付いて)しまっているため、今日のジャンケンの勝敗の確率には関係せず、今日負ける確率は110です。これは「昨日勝利し、かつ今日負ける確率 + 昨日敗北し、かつ今日負ける確率」を計算するとわかります。これは、皿洗いジャンケンの敗北確率は回によって変わらないことを示しています。このように試行の回によって期待値が変わらないような確率過程はマルチンゲールと呼ばれ、公正なギャンブルであることの印とされます。つまり、皿洗いジャンケンはれっきとした公正なギャンブルなんですね。したがって、この条件下ではいかなる方法によっても勝利する確率を上昇させることはできません。できるのは、
・参加人数を増やす 「n増加⇒p減少」(間接的手法)
・ジャンケンに強くなる 「p減少」(直接的手法)
しかありません。
意外な話の後の割には普通の結論に至ってしまい、読者の方はがっかりされたかもしれませんが、そういうものなので仕方ありません。皿洗いジャンケンについて記事を書きたいという人は他にもいるのでもしかすると別の議論があるかもしれません。ご期待ください。